電源が入らなかったり特定のキー入力ができない場合、キーボードのフレキコネクター加圧パッドに手を加えるだけで復活する。

1.ACアダプター、バッテリーパックを外し、キーボード固定ネジ4本を外す。
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2.バッテリーパック取付部分からキーボードの端を押し上げてやり、手前、両サイド、奥へと本体から少しづつキーボードを外し、キーボードコネクターをシステムポードから外す。
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3.フレキ固定用の上側ブラケットを外す。どうでもいいことだが黒ネジのこともある。
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4.キーボー側面から見える切欠き2か所にピンセットを挿し込んで下側ブラケットを引きはがす。
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下側ブラケットに変形した黒いパッドが載っているがこれは綺麗に剥がせた部類。ピンセットの先端が当たる部分がどうしても変形するし、劣化が激しいとちぎれた一部が残ってしまい取り除くのが大変。
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5.厚さ1.0~1.5mm程度の梱包用緩衝材を30x5mmにカットして新しいパッドを作る。ブラケットから古いパッドを綺麗に取り除く。
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ダイソー等にある幅30mm厚さ1mm位の両面スポンジテープを長さ5mmにカットしてブラケットに貼り、その上に新しく作ったパッドを貼り付ける。使えるようなら古いパッドでも問題ない。
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※状態の良い古いパッドの上に新しいパッドを重ねてもみたが、再実装しづらいので止めた。

6.パッドがめくれないように注意しながら下側ブラケットを定位置に収め上側ブラケットで固定。パッドが厚くてネジが届かない場合は、写真の1のように上側ブラケットを介さずにネジだけで一旦下側ブラケットを引上げてやったり、下側ブラケットをピンセットかマイナスドライバー等で持ち上げてやる。
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7.分解したときの逆順で組み上げる。

***
日本IBM最後のホワイトデザインXシリーズThinkPad X32。キーボード故障で10回交換している。その内半分は電源ボタンを押しても起動しないという不具合。もう中古部品もほとんど出てこないので修理する為に故障ストックを分解してみたら、意外と簡単に直ることが判った。ちなみに、Tシリーズで最後のホワイトデザインはThinkPad T41。

キーボードを除けばビジネス用モデルとしての堅牢性は抜群で、発売と同時に使い始めて2021年5月現在ほぼ毎日の使用に支障ない。メンテと言えば年に1度冷却系統の埃除去と10年に1度バックアップ電池の交換をする位。オリジナルのXPを7Proに載せ換えている。
※ホワイトデザイン:一切外注設計部分が無く100%自社設計のこと。

写真は今回分解した1枚を除く9枚の不良キーボード。ちなみにEnterキーだけ青いのは、当時のデザイン部長Y氏の気まぐれに過ぎず特別な意味は無いと聞く。
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構造:
導電パターンが印刷された2枚のシートでセパレータシートをサンドイッチする3層構造のメンブレンスイッチ(薄膜スイッチ)を使っている。セパレータにはキー接点部分の空間距離を稼ぐ為に丸穴が開いている。

導電シートにはそれぞれ20ピンのコンタクトリードが印刷されており、フレキの両面に金メッキしたコンタクトを挿し込み、これを上下のブラケットで挟むことにより導通を取っている。電源が入らなくなったり特定のキーだけ読まなくなるのは、片側のブラケットに載っているパッドの経年劣化よるコンタクトの接触圧の低下が原因。

緑の丸は表裏シートの接着パッチで、ステン製トップカバーにプレスで作ったリベットをアルミ製ベースカバーに通す為の穴が開いている。よって、ここまで分解するにはリベットを破壊しなければならず、キーボードとしては使いものにならなくなる。
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3層構造のメンブレンスイッチ。セパレータは、キー接点と接着パッチ部分が穴になっている。
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こちらはフレキをベースプレートに固定する為のブラケット。
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矢印がメンブレンスイッチの層間にフレキの金メッキコンタクトが挿し込まれている状態の導通接触部分。その下が接触圧を加えるパッドが載ってるブラケット。写真撮影の為にエスカッションを外しているが、ベースプレートへの溶着固定部分を壊さないと外れない。
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メンブレンスイッチのコンタクトからフレキのコンタクトを抜いた状態。F7側が#1、F9側が#20。
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回路図(キーマトリックス)
キートップから見て表裏とした場合の左を#1、右を#20とした。Shiftが利かなくなったり数字・アルファベットが入力できなくなるのはコンタクト中央部での接触圧が低下している模様。電源やマウスが利かなくなるのは左右どちらか片側だけ接触圧が低下しているのだろう。

主要グループ

表|裏6789101112131415
1   左Ctrl   右Ctrl  
2EscTab 半全Q1AZ無変換 
3 CapsLock F1W2SX  
4F4F3 F2E3DC  
5  Fn       
6F6[ I8K(下線) 
7GT 5R4FVB 
8HY 6U7JMN 
9*@ -P0 ]? 
10変換F7 F8O9Lカタひら 
11 左Shift     右Shift  
12F5BackSpace F9F10 EnterSpace 
13IBMVol↓ Delete F11   
14   Insert F12   
15左Alt   ScrLkPrtSc  右Alt 
16  Home End Pause 
17   Page↑ Page↓ ←PagePage→ 
18          
19         Power
スピーカー・マウス  ※Vol↓は主要グループ表にある                                                             
表|裏12345
13SP×   Vol↑
18 マウス左マウス中マウス右 
未使用 NC:No Connection ※裏面17-18-19は接ながっている 
表|裏16NC17-18-19COM20NC
20NC